2025年9月01日
65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳以上*になられる大阪市在住の方は、ワクチンの一部費用補助の対象です。
*(他の年齢は対象外です)
帯状疱疹の状況
日本では増加傾向が継続中で高齢化とともに右肩上がりで増加している。

発症頻度とリスク
50歳以上の人の95%以上がすでに水痘ウイルス(VZV)に感染しており、
生涯で帯状疱疹を発症するリスクは25〜30%、80歳以上では50%にも達します。


合併症について(帯状疱疹後神経痛:PHN)
日本ではPHNやその他の合併症が発症した患者は全体の約9.2%、入院率は約3.4%です。

高齢者に多い理由
A) 細胞性免疫の低下(免疫老化)
帯状疱疹は、水痘に感染後に神経節に潜伏していたVZVが再活性化して発症しますが、高齢になるとこれを制御する細胞性免疫が低下し、再活性化のリスクが高まります。
B) 潜伏感染の普遍性と加齢による累積影響
50歳以上の95%以上がVZVに感染済みであるため、帯状疱疹のリスクは常に存在しています。
C) 自然免疫刺激の減少(「再曝露ブースト」の消失)
子どもと接することでVZVへの自然な再曝露があり、免疫が定期的に強化されると考えられますが、ワクチンの普及や社会構造の変化によりこの免疫ブーストが減少し、帯状疱疹の発症が増加した可能性があります。
D) 生理的・外的ストレス要因の増加
高齢になると心身のストレスや慢性疾患、がん治療や薬剤による免疫抑制状態にさらされやすく、これが帯状疱疹の誘因となることがあります。
帯状疱疹の治療
抗ウイルス薬
発疹出現から72時間以内に開始すると、症状軽減・後遺症予防に有効です。
内服薬と点滴薬があり、点滴は重症例に限られます。
鎮痛
帯状疱疹は痛みが強く、急性期の痛みコントロールが予後(PHN予防)に重要です。
NSAIDs、アセトアミノフェンに加え、強い痛みに対してはトラマドール・オピオイド・神経障害性疼痛薬(プレガバリン、ガバペンチン、三環系抗うつ薬など)を併用することもあります。
補助療法
ビタミンB12製剤(メコバラミンなど)、神経ブロック(星状神経節ブロックなど)、外用薬(カルボカインゼリー、カプサイシン、リドカイン貼付など)
皮膚管理
発疹部位は清潔に保ち、二次感染予防、水疱が破れたら軟膏処置(抗菌外用薬など)
治療が遅れると、眼周囲なら失明の可能性、耳周囲なら顔面神経麻痺や聴力障害が残ることがある!
予防するのが一番!
現在日本で、承認されている帯状疱疹ワクチンは2種類あります
1.生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン:ビケンなど)
- 有効性:発症予防効果は約50〜60%
- 持続期間:5年程度
- 利点:費用が比較的安価(約8,000円前後)
- 注意点:生ワクチンであるため免疫抑制状態(がん化学療法中、ステロイド大量使用中、臓器移植後など)では接種不可
2.不活化ワクチン(シングリックス®:リコンビナントワクチン)
- 有効性:発症予防効果は90%以上(高齢でも持続)また帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防効果も90%以上
- 持続期間:少なくとも10年持続するとの報告
- 利点:不活化ワクチンのため、免疫抑制状態でも接種可能
- 注意点:費用が高い(1回約20,000〜25,000円、2回で4〜5万円)
- 補足:シングリックスに使用されているアジュバントAS-01は認知症リスクの低減に寄与する可能性を示唆した論文も出ています。doi:10.1038/s41541-025-01172-3
確実に予防するのであれば、不活化ワクチンのシングリックスの方が成績はよい!